内定者応援ページmari

キビシイ状況のなかで、オトナの世界へ踏み出そうとしている内定者の皆さんへ。
楢木望さんの著書『内定したら読む本』から、私なりに抜粋して少しずつお届けします。

(原文ままですが、ウェブページでの読みやすさを考慮して原文にない改行を入れています)

3/18 「あとがき」から抜粋

 自分に対して敬意を払って生きて欲しい。これが、内定したあなたにお伝えしたかったことの一つです。

 一つの会社を選ぶということは、他の会社を選ばす、他の生活手段を選ばなかったということです。場合によっては、選べない事情があったのかも知れません。しかし選んだからには、その会社や会社員として働くことに通暁(すみずみまで知りつくすこと)し、会社を取り巻く社会や経済環境を見極める目を養い、会社の仕事や仕事を上手く進める方法に熟知して欲しいのです。それが、その会社を選択した自分に対して、敬意を払うということです。

 働くことに競争や順位はつきものです。たとえば製品開発やセールス活動では、他社との競争も社内での競争もあります。給与や昇進の決定に当たっては、同僚社員との評価順位がつくでしょう。そこで頑張ることも悪くはないのですが、それだけが仕事生活の目標になってしまうと、少しばかり自分に対する敬意が薄れてしまうような気がするのです。

 人間には強いところもあれば弱い面もあります。完璧もあれば欠けている点もあり、誇れることも恥ずべきこともあります。しかしそうした自分を丸ごと認め、なおかつ満足に持ち込むことが、長い仕事生活を通して、自分に与えてあげられる最良の状態ではないでしょうか。自分に対して、甘くはしないが厳しくし過ぎないこと、自分を、大切な友人に対するように扱うこと、これも自分に対する敬意ある態度です。

 お伝えしたかったもう一つは、世の中との向き合い方です。
 ビジネスの世界のコミュニケーションには、マーケティング的手法と、メッセージ的手法があります。世の中の動きをつかみ、人々の欲求や好みを捉え、それに対応した製品やサービスを提供するのがマーケティング的手法です。仕事の世界では、とりわけこの手法の大切さが強調されます。また、マーケティングを怠った商品は、間違いなく売れなくなります。それは仕事の能力や態度にも言えることで、周囲がどのような能力を望み、どのような態度を期待しているかを察知するような、マーケティング的な心得が大事です。

 しかし一方、人間は他人の期待を実現するために生きるのではありません。そのような生き方に偏りますと、外見や世間体は良いのですが、だんだんと内側にある精神がネジレてくることがあります。新人の頃は溌剌と漲るもののあった人が、キャリアを重ねることで、卑屈になったり、人におもねったり、その裏返しで威張り散らしたりするようになれば、それは精神がネジレてきた徴候です。

 すぐれた会社とおつき合いしますと、マーケティングに長じているばかりではなく、何か強い文化を持っていることがわかります。それは、社是や社訓に書かれていることを指しているのではありません。製品開発の考え方や、販売の姿勢や、会社運営の方法や、社員の扱い方や、社員の行動から、メッセージとして伝わってくるのです。その背後には、自分たちの文化を損なわないための意志とルールが感じられます。

 他人の期待を、ではなく、自分自身を生きようとする人にとっても、自分を損なわないための意志とルールが必要です。そのような「自分のルール」作りに踏み出すために、この本がお役に立つことができれば、著者としてこれ以上の深い満足はありません。

『新訂 内定したら読む本』あとがきから

編集:MariY