書斎から NozomN の書斎から

地上へ降りる

 名前はいわないけれども、十数年愛用してきたスケジュールアプリとの、お別れを考えている。

 性格の不一致、とか、他のアプリに浮気したから、とかではないことは、前回に述べた通りだ。ただ、ぼくが歳を取ったのである。死ぬ前に始末をつけようと、有料アプリの解約に乗り出しているだ。

 このアプリ(仮に「くまモソ」と呼ぶ)には、過去十数年分のスケジュールが入っていて、いつ誰と会ったか、いつ床屋に行ったか、いつこの本を買ったかが、すぐに調べられる。紙の手帳にくらべて確かめるのがカンタンなので、いろいろな覚えを、ありったけ詰め込んできた。

 初めのうち、くまモソは端末の中だけで使うものだった。ところが、データもアプリも、クラウドとつながるようになって、いろいろと変わった。アプリの改善が頻繁になった。満を持して登場した新版を買い直す、ということがなくなった。データをクラウドに置くことで、どの端末からでも使えるようになった。自分のクラウドにログインすれば、他人の端末からでも使えるようになった。

 年がら年中最新なので、くまモソの販売元はスケジュール帳を売らなくなった。かわりに、スケジュール帳を使う権利を売るようになった。権利は1ヶ月とか1年とかの単位で売られ、もうやめると言わなければ、自動的に関係が続く仕組みになった。

 そんなわけで、くまモソとお別れすると、クラウドとは縁が切れ、これまでのデータとも別れ別れになってしまう。で、そうなるまえに、データを地上(端末)に引き取ることにした。練習したので、十数年分のデータを端末に収めるやり方はわかった。このデータを、無料のスケジュールアプリに取り込めることもわかった。

 これで少し落ち着いた。データだって、地上に降りれば、きっと安心するだろう。ぼくはさっそくくまモソを開いて、12月31日に「くまモソ解約、データをPCに」と予定を入力した。それから、くまモソの繰り返し機能を使って、「毎年繰り返す」と設定した。

2020/10/14 NozomN