tomorrow& tomorrow

4/1 経営者T氏へのエール

T・Tさま

 またお会いしましょうと言いながらお会いできず、新年度を迎えてしまいました。

 どこも同じとは言え、とりわけ苦境に立つ企業のトップであり、また業界のリーダーとしての貴兄のご心労が、いかばかりかと拝察しています。

 この苦境をどう乗り切れるかなどは想像もできませんが、ボクの知見する分野でのことを、少しお伝えします。

 米国で〈FlexJobs〉という求人サイトがあります。リモートワークに特化したサイトで、ここに求職者が殺到しています。こんなときですから、求職者が殺到するのは当たり前ですが、それにしても他を圧倒する閲覧数になっています。

 目を引くのは、他の求人サイトと違い、求人件数も増えていることです。なじみのオレゴン州では、本日時点で9,457件の求人が積み上がっています。これだけリモートワークが需給ともに拡大しているのは、新型コロナでレイオフが急増したことが原因であることは間違いないでしょう。

 5日前、米国の新規失業保険申請件数が328万を越えたと伝えられました。市場予想は100万件、予想の上限は400万件でした。これまでの最高記録は1982年に付けた69万5000件だと言います。

 このすさまじい実態は、多くの職を奪うだけでなく、「オフィスで働く恐怖」をもたらしているようです。たとえ今回のコロナ禍が収まって再び職に就いても、また世界的感染に巻き込まれるかも知れないという恐怖です。人生を守るために、リモートワークに傾斜する雰囲気が強まっているようです。

 これに対応して、不動産業界でも異変が起こっているようです。まず各都市のオフィスの縮小です。レイオフの影響と、リモートワークの影響が重なり、不動産業界ではレイオフが収まっても、リモートワークによるオフィス縮小は元に戻らないとみているようです。そればかりか、さらに縮小が続くとみています。

 こうした事態の周辺には、リモートワーク関連業界の活況があります。またリモートワークに関する研究が深まり、収支の見通しからやる気維持のノウハウまで、さまざまなデータが出始めています。

 収支の見通しでは日本にある外資系企業の例なども用いられています。外資の1人当たりオフィス面積は3.8坪で、坪3万円の賃料とすると、100人の会社で常時60人の社員がオフィスを使うようにするには、だいたい70人分のオフィス面積が必要で、月に、3.8坪×3万円×30人=342万円、が節減でき、年間4,000万円が節減。これをリモートワークのシステム構築費や運用費、リモートワーク手当てやPC、通信代の支給の原資にしようというものです。

 一方の社員側でも、リモートワークムービング(引越)が始まったようです。リモートワークを本格化すると、閉ざされた専用の部屋が必要になり、そのために郊外の広い家に引っ越すというのです。こんな住み替え需要に対応して、リモートワークモデルの家を建築・販売をする業者も出てきました。

 新型コロナウイルス後の世界がどうなるかは様々に観測されていますが、なにかこれまでと違った方向に大きく舵が切られるような気がします。ボクの狭い知見の範囲では、会社と仕事場の分離が気になります。

 第一段階は、テレビ会議を使ったグループコミュニケーションや、出退勤を初めとする時間管理システム、コワーキングスペースの運用法、自宅オフィス化や自分管理アプリなどが慣熟しそうです。しかしすぐに、上司、グループ、顧客とのコミュニケーションで、VR化が加速するような気がします。

 先ごろアップルの「開発者会議2020」の物理イベントが中止され、代わりにオンライン形式のイベントをすると発表しました。従来のイベントでは世界中から開発者や記者たちがサンノゼを目指しましたが、今回は世界の開発者たちは移動せず、オンラインだけで一斉につながります。アプリ開発者は2,000万人、主要開発者は300万人といいますから、オンラインイベントとしては未曾有の規模です。

 この影響はいずれ、接客販売にも及ぶ可能性があるのではないでしょうか。特定の場所に出かけなくても、大抵のことはテレコミュニケーションで済む。VRによってよりビジュアル的に、詳細に、専門的に表現できる。

 となれば展示の世界でも、展示は展示場所にあるのではなく、会社の部署に、人のところに、オンラインを通じて呼び出せる、そうしたスタイルになってくるかも知れません。テレコミが深化、変質する徴候は米国を中心に出現度が高く、事例、データ、解析、開発が出そろってくると思います。

 さて、新型コロナウイルスの不自由な時間を、次のステージに乗り移る準備に充てることができれば、今年を貴社の新基盤にすることができるのではないかと思います。が、ボクが書いたことはすごく狭い分野からのことですので、ずいぶんと的外れなことだと思います。

 できれば貴社の社員諸君から、新しいステージへのアイデアや展望が、たくさん出てくることが一番です。かつて経験したことがないこれからの一年が、そのような雌伏の一年になることを切に祈り上げます。

NozomN