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アートの町で

ポートランドはアートの町だ。
中心街に限らず、小さなギャラリーのある町が多い。アーティストがたくさんいて、アーティストたちをサポートする仕組みも、さまざまに整っている。

Vrbo でアパートメントや一軒家を借りるようになって、そういうことがよく分かってきた。一ヶ月か二ヶ月の単位で借りる住まいには、たいていどの部屋にも、絵やオブジェが飾られている。
一部屋に一つというよりも、何も掛かっていない壁がないほどに、絵や写真が掛かっていることが多い。

もう30年ほども前に、英会話のテープをポートランドで制作するために、長期でアパートメントを借りていたことがある。
ある日、アルバイトで来てくれていたジュリーが、ポスターをプレゼントしてくれた。
「マリ、これを掛けるといいよ」

たぶん、何も掛かっていない壁を見るのが忍びなくて、たまらずポスターを持ってきたのだろうと、今なら分かる。

ちょうどそのころ、ダウンタウンのリバーサイド沿いの小さなギャラリーで、心惹かれる絵に出会った。
雨のダウンタウンを背景に赤い傘をさして歩いている三人の後ろ姿。
雨の多いポートランドならではのチャーミングな絵を、何度買おうと思ったことか。

ライン

絵や写真を飾ることが、花を飾るのと同じように自然なことだと感じるようになったのは最近のことだ。
毎年のある時期をポートランドで過ごすようになり、絵のある暮らしの心地よさが分かってきた。

シゴトで疲れて帰ってきた時に、ふと顔をあげた先に、気に入りの絵が掛かっている。買い物から帰ってきて冷蔵庫にいろいろ仕舞って振り返った先に、好きな絵がある。
花を見て癒されたり慰められたり嬉しい気分になったりするのと、同じことだった。

気負わなくていいと分かって、昔ダウンタウンで見つけた雨の絵を探すことにした。
初めて見た時から2〜3年は、同じギャラリーで売られていたことが分かっている。
しばらくして別のオーナーに代わったのか、置いてある絵の傾向が変わり、以来見かけていない。

たくさんのギャラリーを見て歩き、ついにその絵に再会できないままでいる。でもその途中で、レイチェルさんの絵に出会った。(続きます)

2021/2/10 MariY

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