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35 シンボル

萌芽

 しかし米国がシンボル問題に取り憑かれたのは、何もこれが初めてではなかった。二〇世紀の初めにはシンボル・インタラクショニズム理論が萌芽していた。人間はシンボル(意味)を操作する動物で、お互いにシンボルを媒介にして働きかけ合う、というのが論の根幹だった。うーん、そういう考えもアリかもだけど、だからどうなの?ってなことで、いろいろな学者が入れ替わり立ち替わり登場したが、不完全燃焼気味にひっそりと燻っていた。

ライシュ

 ところがロバート・B・ライシュという男が現れて風向きが変わった。ライシュはクリントン政権で労働長官を勤めたが、むしろシンボルの意味を深めた上に実用にした功績で、歴史に名をとどめることになった。彼が書いた『THE WORK OF NATIONS』(中谷巌訳・ダイヤモンド社)にシンボルの新たな語法が生まれたのである。

3つの新職業

 ライシュは従来の職業分類にはない新しい職業が3つ生まれていると表明した。「ルーティン・プロダクション・サービス」、「インパーソン・サービス」、「シンボリック・アナリティック・サービス」。これだけでは分かりにくいので以下に個別解説を附す。2つの職業にカチョーがノミネートされているので、解説にならってわが身を分類してみると良いだろう。

ルーティン・プロダクション・サービス

 繰り返しの作業中心の職種。現場労働者だけではない。カチョーもハンチョーも含まれることがある。標準手順や定められた規則がベースの職種は、すべてここに含まれる。給料は労働時間や仕事量で決定される。読み書きソロバンはもちろん、信頼性、忠誠心、対応能力が必須。情報処理関連がこの職業に大量に流れ込んできている。

インパーソン・サービス

 人を相手の繰り返し作業職。要件はルーティン職に変わらない。店員、ウエイトレス、ウエーター、銀行の窓口係、介護士、タクシー運転手、秘書、美容師、スチュワーデスなど。相手が人だから笑顔と振る舞いが大事。

シンボリック・アナリティック・サービス

 データや言語、音声、映像表現などのシンボル操作する職業。シンボリック・アナリストと呼ぶ。彼らはシンボル操作によって問題を発見したり解決したりする。上下関係ではなく、パートナーとの仕事が多い。収入は仕事の質や問題解決の速さによって決まる。専門家がこの分類に入るが、条件を満たせば専門家でなくともシンボリック・アナリストになれる。逆に十年一日の如き授業を繰り返す大学教授は、ルーティン職に分類替えされるだろう。