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ポートランドのCSA

 ポートランドのNPOに〈Portland Area CSA Coalition〉がある。農家と消費者を結びつけて、サブスクリプション型で直接取引の仕組みを提供している組織だ。

  CSAは「Community Supported Agriculture(農業を支援するコミュニティ)」という全米で普及しているシステムで、これに参加している農家を「CSA農家」という。それをポートランドエリアで束ねる〈Portland Area CSA Coalition〉は、つぎのように謳っている。

 〈Portland Area CSA Coalition〉は、地域支援農業を通じて農家とつながります。私たちは人々が地元の農場を見つける手助けをし、農家が持続可能な繁栄するビジネスを創出する手助けをします。私たちは、活気に満ち、環境にやさしいローカルフードシステムが、健康的でアクセスしやすいローカルフードを通じて、農家と世帯の関係を構築することによって生み出されると信じています。

 消費者は〈Portland Area CSA Coalition〉のサイトで、自宅に配達可能な農家のリストを得て、自分に合った農家を探す。農家のリストには、扱っている農畜産物や生産ポリシーから支払い方式までがカンタンに紹介されている。

CSAサイトへ

 参加している農家を見ると、お隣のワシントン州からの参加もあり(消費税が違うことはどう処理するのだろう?)エリアも扱い品目も広範囲であることがわかる。一方では、ぼくたちが馴染みの地域からのエントリーも多く、ダウンタウンに近いポートランドメトロにも、多くの農家があることに気づかされた。

 年間を通して果物やワインや干物などを届けてくれる、サブスクリプション型のサービスは日本にもある。しかし多くは新聞や折り込み、DMを介しての商品サービスだ。これでは宣伝力がない小さな農家は弾かれてしまう。代理店が小さな農家を束ねるやり方もあるが、参加料とマージンがバカにならない。

 米国は官も民も、公も私も、ネットワークの作り方がシンプルで上手だ。とくにポートランドは、これは持続させたいという物事が出現すると、だれかがすぐにネットワークシステムを作ってサポートする。運用しながらシステムを磨き上げる。システムをビジネスにした方が良いとなれば、マネタイズを考えて企業化する。

 またネットシステムを作ると同時に、さらに持続させるリアルの仕組みも投入していく。ポートランドの〈LittleBox〉はその好例だ。まずクラフターやクラフト販売をする小さな店の一覧の提供から始めた。すぐに一覧をマップ化した。マップを利用したクラフター巡りのコースを設定した。クラフター巡りのスタンプラリーを始め、フェスティバルにした。

 ポートランダーはフェスティバル好きだが、それにしても自分たちが支援したいものを、ムリなく押し広げて、楽しく持続化させることが得意だ。〈LittleBox〉もたちまち国際的なお祭りにしてしまった。誰かが独り占めのプラットフォームを作るのではなく、みんなが使えるプラットフォームを素早く作り、利益と恩恵と楽しみとを、持続的にシェアし合うのである。

 ところで農家と消費者を結びつけるNPOの〈Portland Area CSA Coalition〉は、農畜産物の販売や配達を行っているわけではない。CSA農家のリスト提供やイベントの企画、案内などだけである。消費者は個別農家のサイトでオーダーをすることになる。そこでCSA農家は、サイトの構築、受注、決済、配送管理が必要なのだが、それが苦手な場合には、それらをパッケージした〈Farmigo〉など、有料のクラウド型のソフトもある。

 〈Farmigo〉は参加農家からは月額会費を取り、消費者へは大中小のパッケージサイズで価格を決めている。本日改めてこのサイトを訪れたら、どのパッケージサイズを注文しても「待機リスト」に登録されるだけだとわかった。新型コロナの影響だが、この隆盛ぶりを見れば、外食産業やレストラン向け農産物の売れ行き不振に悩む日本の農家への、ひとつのヒントとなるかも知れない。

2020/4/26 NozomN